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ICOを取り巻く環境の変化 – 金額の増加と人数の減少

本記事では、ここ1年間でイニシャル・コイン・オファリングを取り巻く環境がどう変化したのかについて簡潔に説明したいと思います。誰でも自由に参加できる冒険的なプロセスから、昔ながらの投資の方法と類似した、より構造化されたプロセスへの移行について述べていきます。

急成長
イニシャル・コイン・オファリングは、スタートアップによる資金調達の1つの形態として、まだ初期の段階にあります。Mastercoinと呼ばれるプロジェクトの資金調達を目的とする最初のICOが行われたのは2013 年7月のことであり、本格的に軌道に乗ったのは2017年に入ってからです。にもかかわらず、何百社もの企業がすでにICOを利用し、数十億ドルもの資金の調達に成功しており、その額は今後も増えていくことが予想されます。ICOはブロックチェーンベースの冒険的事業を実現する主要手段の1つとなっています。

その成長は疑いようがありません。大局的な見方をすると、2017年に調達された56億ドルという金額は、2016年の調達額である2億4,000万ドル の20倍を優に超えています。今年も減速の兆候はありません。当社の集約データによると、すでに454社の企業が132億ドル超の資金を受け取っています。まだ2018年の半ば過ぎであることを鑑みると、この金額がいかに凄いかわかるでしょう。

変化したのは金額だけではありません。ICOが行われる方法自体が大きく進化しており、1年前の時点における典型的なコインオファリングは、現在のそれとはかけ離れたもののように思われます。これらの変化について、1つずつ説明させていただきます。

単純な経緯
イニシャル・コイン・オファリングのコンセプトは極めてシンプルです。まず、少数の人々(創設者)がアイデアを思いつきます。アイデアの実現にはお金がかかるため、彼らはインターネットで他者に資金援助を依頼し、そのために、定評のある暗号通貨(通常はイーサリアムおよびビットコイン)に変換することができる新たなトークンをリリースします。人々はプロジェクトの成功を信じているため、その価値の上昇を期してトークンを購入します。パブリックセールはこのようにして行われるようになりました。

パブリックセールは基本的に、2017年の後半まで、プロジェクト発表後のICOの唯一の手段でした。しかし手っ取り早く必要資金を調達することができたのはごく一部のケースであり、その他多くのケースで、限られた時間内に十分な資金を調達することの難しさが実証された形となりました。後者の企業はある時点で、投資家の関心を引くためには新たなインセンティブが必要であると考えるようになりました。その結果として生まれたのがプレセールです。

鼻先に人参
プレセールはパブリックセールの前に行われるイベントです。プレセール期間中に企業のトークンを購入する人々には、格安価格や独占アクセスといった様々な特典が与えられます。それだけではありません。プレセールにかけられるトークンには通常、ロックアップ期間が設定されません。つまり投資家は、取引が可能になった途端にそれらのトークンを売却することで、手っ取り早く儲けることができるのです。そのうえ。売りに出される暗号通貨の枚数は全発行枚数のごく一部であるため、需要がさらに促進されます。これらの理由から、プレセールスが大成功を収め、パブリックセールの必要性がまったくなくなってしまった事例さえあります。

プレセールは、プロジェクトのジャンプスタートを促し、パブリックセールに向けて準備を整えるための素晴らしいツールであることが判明しました。とはいえ、大規模な投資であることに変わりはなく、創設者は、チームを編成し、ホワイトペーパーを作成するだけでなく、実際に機能するプロトタイプを速やかに打ち出し、何らかの行動によって人々の関心を維持する必要もあります。野心的なプロジェクトにおいては、経費が数十万ドル、あるいは数百万ドルに及ぶこともあります。そのような負担を単独で引き受けることができる創設者はほとんどいません。しかし幸いにも、条件が整いさえすれば、支援を厭わない人々は常に存在します。

初期投資の必要性は、従来のスタートアップが採用していた「シードファンディング」というコンセプトをICOにもたらしました。これは農業に由来する極めて隠喩的な名称です。投資家は農民のように、成長し、いつか実を結ぶことを願って種をまきます。シード投資はハイリスク-ハイリターンであり、投資額が同じであっても、パブリックセールやプレセールよりも数倍多くのトークンを収穫することができます。また、シード投資に権利確定期間が設けられることは滅多にありません。つまりトークンは公開された途端に清算可能になります。これによりリスクが大幅に低減し、投資がより一層、魅力的なものになります。

新たな課題
現時点において、ICOの構造は極めて複雑なものになっています。資金調達の取り組みは、 一連のシードファンディングで始まり、プレセールがそれに続き、パブリックセールで終わります。創設者たちは、これらのステップを追加することで、開業資金の調達や牽引力の獲得といった、これまでに直面してきたいくつかの問題を解決することができました。しかし、初期の支持者の間では、1カ月後に売却して手っ取り早く儲けた後に、さっさと別のプロジェクトに移ることができるのに、どうしてトークンを1年間も保持しなければならないのか、という新たな疑問が生じています。

この状況に追い打ちをかけるかのごとく、業界の爆発的な成長が、政治家たちの注目を集め始めています。彼らは、この最先端領域を掌握するために、古いしきたりを課そうと試みました。その結果、人々は厳格な本人確認の手続きを経なければ、投資することができなくなりました。また、企業は、新たに発行したトークンが、証券取引委員会によって有価証券とみなされるかもしれないという不安に常につきまとわれるようになりました。

ゴーイングプライベート(非公開化)
プライベートセールは、ICOライフサイクルの初期段階に、通常はプレセールの前か、プレセールの代わりに行われます。その目的がプロジェクトの資金調達であることは変わりませんが、その方法は大きく異なっています。プレセールは、比較的オープンな状態が保たれていますが、大抵の場合においてパブリックセールよりも参加の敷居が高く、プライベートセールに参加することができるのは、機関投資家、ベンチャーキャピタル、投資ファンドといった大規模なプレイヤーに限られています。

創設者たちは、厳格な基準によって選別された少数の強力な支持者を獲得することにより、価格操作を回避しやすくなり、海図にない規制の水域を航行することができます。SEC はいまだに、暗号通貨を有価証券とみなすか否かに関して明確な姿勢を示していません。企業は、DAOトークンに対する判断の二の舞を踏まないように、リスク回避スキームとして、Simple Agreement for Future Tokens (SAFT)と呼ばれる方法を採用し始めています。これは、適格投資家のみに提供される担保契約の一種であり、そこでは、開発者によって何らかの実利的な用途が与えられている、未発行のトークンにおける権利が付与されます。

風向きを変える
プライベートセールとプレセールはパブリックセールで実施することができます。しかし今日では、それらをパブリックセールの代わりに行うことを選択する企業が増えています。それはとりわけプライベートセールに当てはまります。

大物投資家が市場に参入し、不確かな規制環境が継続すれば、当然のことながらプライベートセールへの関心が高まります。その結果、とりわけトークンの一般普及と中央集権化が業界に与える影響に関して、何らかの検討が必要となります。創設者たちは、少数のトークンを無作為のウォレットに送信すること(Airdropと呼ばれる行為)により前者に対応しようとしています。他方、後者は価値観の問題であり、理性的な議論が適しています。

要するに、ICOを取り巻く環境は目まぐるしいペースで変化しているということです。あらゆる最先端領域に起こることですが、ICOは今、支配者層が関与し始める段階に達しています。それは、ICOが向かっている方向が好ましいものであろうがなかろうが、市場が成熟に近付いている証拠です。

 

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